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総務省のふるさと納税研究会の報告書が公表された。今年5月に総務大臣が住民税の1割をふるさとに付け替える構想を提起して以来、これに対し、是非推進すべきだ、いやふるさとの特定が困難である、住民税ではなく寄付金制度を使うべきだ、いや大都市側としては反対である等、各所から様々な意見が飛び交った。そして今般これに対応して政府の研究会がその検討の結論を出した。その論点は要約すると次の5つである。 @ 納税者が選択するところを「ふるさと」と認める A 住民税の分割ではなく、寄付金税制を適用する B 所得税と個人住民税双方を対象とした仕組みとする(ことが望ましい) C 所得控除ではなく税額控除として個人住民税所得割の1割を上限とし、適用下限額を5千円とする D 寄付を受ける地方公共団体は、寄付の使い道を明らかにすることが求められる こうした結論は、旧自治省で2003年より始まった“ふるさと寄付金控除”制度をほぼ踏襲しており、Cのみが大きな変更点といえる。 筆者はかねてより、大都市と地方にふたつの住まう場を持つ二地域居住=地方兼居の社会をつくることが必要だと考えており、その結果として、大都市と地方間の住民税の按分を行うべきである、しかしそれがすぐに無理なら“ふるさと寄付金控除”制度を使うべきだと考えてきた(「兼業・兼居のすすめ」(東洋経済新報社)2006年3月、他)。こうした立場からみると、今回の報告書は概ね妥当なものであるが、いま少し考えてみたい。
地方に還元すべきは20%、8千億円 そもそもこの問題があるのは、地方の17歳人口の2割が東京に出て行ったきり戻らない状態が続いているという現実があるからであり、これをしっかり踏まえて“ふるさと納税”の制度化を図るべきと考える。 学校基本調査によれば、地方の17歳人口85万人のうち、大学進学者は33万人である。この7割、23万人、人口比で0.3%が他県の大学に進学している。県外への大学進学の過半数を受け入れる側にあたる東京都による居住環境等移動理由別人口調査によれば、「就職」のために東京の転入超過が起こっている訳ではなく、ほとんどが地方から「入学」という理由により東京の人口は増えつづけていることが明らかとなっている。地方からの人口流出が0.23%であるので、地方の人口流出の多くは、まさに地方で育った高卒の英知の流出そのものである。 これから言えることは、将来の芽だけが摘み取られて、地方の人口減少が起こっているということである。その規模は、17歳人口の27%(=23万人÷85万人)に相当する。先の東京都の分析によれば、東京の大学に入学した若者は、卒業後すぐにではなく4割は徐々に親族との同居のため地方に帰り始め、残りの6割は東京に残留したままとなる。そしてある者は上場企業のトップに上り詰め、東京の活力の源泉となる。 戻ってくる4割も平均年齢33歳で帰ってくるため、地方にとってその37%分(=18〜60歳のうちの33歳までの16年間)を失い続けている。結局、地方は、育てた子どもが生産能力を発揮することによって地域に活力を与えることに関して、常にそのポテンシャルを20%(=27%×0.6+27%×0.4×0.37)ディスカウントされつづけなければならない宿命を背負っている。 もとより、大都市住民が1年間のうち2ヵ月を地方で過ごすとしても、大都市側の道路等のインフラ維持費など基礎的行政サービス費用は変らない。したがって大都市側にしてみれば、住民税を按分するのは理に合わない。しかし、このままでは地方は20%のディスカウントが継続してますます疲弊することになり、大都市への人材供給が細って国の活力の持続性が保証されない。 そこで、NPOふるさと回帰支援センターの5万人アンケート調査で明らかとなった40%にのぼる二地域居住希望者が具体的な行動に移るきっかけづくりとして、既に存在する「ふるさと寄付金控除」制度を再設計し活用することが現実的である。
ふるさと寄付金は2割を限度 まず、個人住民税の2割を限度として、地方に寄付が行えるようにすべきである。政府の研究会報告書で示された1割を限度とする結論には意味がない。根拠が見当たらないのである。2割は、本論で述べている地方の期待税収の還元である。厳密に言えば、大都市住民だけがふるさと納税をするならばその限度は17%である。そうした観点からいえば、現行のふるさと寄付金控除制度の上限25%を据え置くのもひとつの考え方になる。なんらこれを1割に下げる理由はない。 本来ならば納税者個人の限度額ではなく、ふるさと寄付金の年間総額の限度を8千億円とすべきである。これは大都市住民税の17%の地方移転、地方の住民税が25%増えることを意味する。ふるさと寄付金の全国の月次集計のシステムがあれば、年度分の限度をチェックでき、これは可能である。 いずれにしても、1割でなく2割をふるさと寄付の限度とすることによってはじめて、若者の流出による8千億円の期待税源の逸失分が取り戻せる可能性を拓くと考える。
ふるさと“空き家”寄付金の制度化 その上で、このふるさと寄付金では、まずは出身地に対する寄付貢献を奨励すべきである。とくに地方に空き家を残してきた人には、まず率先して地元に寄付を行うように働きかけることが必要に思える。地方に残してきた空き家は風入れも行われないため、朽ちるのを待つばかりである。鹿児島では、度重なる台風の通過にともない、こうした空き家の屋根が飛び、多くの被害を周辺にもたらしている。 遊休農地の場合、雑草や害虫の発生により周辺農地に被害が及んでいることから、2005年に農業経営基盤強化促進法が改正された。遊休農地の所有者による草刈り等の管理が義務となり、それを行わない場合は市町村長が代執行をして土地所有者からその料金徴収をする制度が始まった。 これと同じようなことが、空き家にも必要と考える。自らの空き家の管理のための寄付を行い、地元のシルバー人材センターなどに、少なくとも定期的な風入れを行ってもらうのである。 現在、地方には300万戸の空き家が存在する。少子化のため、これが2020年には460万戸に拡大すると筆者は推計する。地方の住宅の5軒に1軒が空き家状態になるのである。この状態は、まさに地方の崩壊である。これを避けるためにも、大都市住民にもう一軒の住まう場、地方兼居の場として空き家を活用してもらうことが必要と考える。しかし、300万戸存在する空き家のうち半分は朽ちて使えない状態にあると推定される。 そこで「ふるさと“空き家”寄付金」とでもいうべきものを、ふるさと寄付金制度の優先的事項として括りだし、できれば制度化を図る。それは、住民税の移転であるふるさと納税が“ただ単に”行われるべきではなく、“合理的”であるべきことに応えるためにも必要である。二地域居住によるベストな“住民税の按分”が制度上難しいため、セカンドベストの“ふるさと寄付金”を選択するが、しかし、そこには合理的な住民税移転の説明が必要である。「ふるさと“空き家”寄付金」が制度化すれば、ふるさと寄付に“合理的な”住民税移転の論理が備わる。 このようにすれば、20万円の住民税を納める人がその2割を自分の空き家のある地元に寄付をすることを行い、300万戸で合計1,200億円の移転が起こる。これは8千億円の15%に相当する。その結果、空き家の多くはこれ以上は悪くならない“寛解”状態を保つことができるだろう。
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